南極大陸を除き、新型コロナウィルス感染者が続出している時に観る「復活の日」1980年【後編】【番外地日劇】
これを最初に見たのは、TBSのテレビ放送だった。印象としては当時の角川映画によくある、宣伝に勝てない映画というか、期待外れだった。スケールの大きさはわかるが、今一つ、どれを狙っているのかわからなかった。草刈正雄は悪くない。しかし「日本沈没」の藤岡弘の立場かもしれないが、脇役が目立ちすぎてオリビア・ハッシ―とのラブストーリーも短く、共感も感動も薄い。日本のウィルス蔓延シーン、南極基地、ホワイトハウス、アメリカ大陸放浪と盛り沢山。しかもウィルスだけでも大変なのに、地震、核爆発で人類が二度死ぬ。テレビシリーズでも描き切れないような内容で、逆に言えば2時間くらいに、よくまとめたとも言える。目に見えないウィルスによる被害を発汗や顔色のメイクの表現にとどめていたり、核爆発を特撮ではなく、記録映画の流用でまとめているのも映画的に弱いように感じた。またミサイル発射阻止も一番、ハラハラさせられるべきなのに、意外とあっさり発射されてしまい、何のために南極からウィルスが蔓延したワシントンに来たのかわからないような感じだった。
ただ、2020年3月にこの映画を見ると、前半の日本の「医療崩壊」や「自衛隊による戒厳令」風のシーンはとても他人事ではないような現実味があり怖かった。山積みの死体を火炎放射器で焼くシーンまで出てくる。そういえば、1980年という設定で、米ソの冷戦構造の描写はあるが、以下のような描写はない。
国会議事堂、自衛隊は出てくるが、日本政府、政治家は出てこない。総理大臣も出てこない。
映画では「イタリアかぜ」となっており、アメリカ大統領、上院議員も感染。欧米の被害状況はでてくるが、中国や中国人の被害状況は出てこない。
SF映画だが、パソコンさえも出てこない。アメリカの博士は、タイプライターを使用。
何年目かの3.11も近づいてくるが、この映画を見て、ウィルス、地震、放射能の脅威が起きないよう願った。
オリンピック中止の雰囲気もあり、経済破綻の可能性も見えそうなところに、大地震、原発事故がおきたら、本当に最後が来てしまう。
ウィルスが蔓延しているので、避難所に避難できない可能性もある。
また、見る状況によって、映画の見え方も大きく違ってくると再認識させられた。
小松左京の小説のような現実が続いていく世界は、いつまで続くのか。(敬称絡)
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